昨今、人工知能(AI)が急速に進化し、人々の生活が便利になる一方で、クリエイターやアーティストからオフィスワーカーまで、これまで人間が行ってきた仕事がAIに置き換えられるなど、さまざまな懸念も出ている。
筆者自身もAIの開発が進むアメリカに住み、実生活やメディア、そして人々との会話を通じて、AIの進化や生活の変化を肌で感じる機会がこの数年で明らかに増えたと感じる。
つい最近も、OpenAIで以前働き、Anthropicを退職したばかりのAI研究者、ジェイコブ・コクソン(Jacob Coxon)氏がAI開発競争への強い危機感を表明した。この投稿は瞬く間にSNSで拡散され、シリコンバレーのみならず、政治家を含む米国社会に波紋を広げている。
現場の最前線で活躍するクリエイターは、AIの進化や未来についてどのように思っているのだろうか。
ニューヨークの一大アニメ祭典「Anime NYC 2026」に登壇するため来米したモコちゃん(Mokochan)監督に話を聞いた。まずはアニメ監督になった話から。
アニメ監督になったきっかけ
最初はいろいろな仕事を試してみました。自分に向いているものを探そうと、2、3種類の職種を経験しましたが、あまりうまくいきませんでした。
それで昔からアニメが大好きだったので、この業界に飛び込んで、まずはアニメーターとして出発したら、予想以上に長く続けることができました。それが最初です。
アニメーターとして絵を描くうちに自然と『自分で絵コンテを描いてみたい』『シリーズの構成に関わってみたい』という思いが強くなっていきました。通常のアニメーターは、あらかじめ用意された絵コンテに従って各フレームの絵を描くのが仕事ですが、実際に描いていると「次のカットは自分ならこうしたいなぁ」という意欲が湧いてきました。それでストーリーボード・アーティスト(絵コンテ)を始めたのが、監督になる最初の一歩でした。
もとから映像作品が好きで、ストーリーボード(絵コンテ)を描く機会が増えるにつれて、制作プロセスそのものにもっと深く関わりたいと思うようになりました。
クリエイターとしてAI時代にどう向き合う?
モコちゃん監督が手がけた新作TVアニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』は、サイバーテクノロジーや人工知能を題材に「人間であることの意味」を探求するSF作品だ。
AIが急速に発展するこんにち、この作品のテーマはより一層、現代における意義を持つようになったと思うかと問うと、「はい、思います」とモコちゃん。
「『攻殻機動隊』の原作漫画は(発売時の)90年代、先進的な未来像を持っていました。当時多くの方は、何を描いているのかよくわからず、難しいと言われてきました。
今でも難しい作品ではありますが、我々がAIを実際に使うことで、より理解ができるようになりました。時代が追いついてきて、わかりやすく読めるようになったと思います」と答えた。
続いて、このようにも話した。
「私が面白いと思ったエピソードは、原作だと脳内通信、電脳通信の描写です。原作が出版された時代はWi-Fiが存在していなくて、人々はそれがどういう仕組みなのかよく分かっていませんでした。『これはテレパシーなの?』と思った方もいるようです。しかし現代ではこうした技術やAIへの理解が深まり、まさに今こそ、このシリーズを改めて見直す絶好の機会だと思います」
『攻殻機動隊』が世界中のSF作品のクリエイターらに影響を与え、これほど長くグローバルに人々に愛され続ける理由は何だと考えているかについては、
「この作品が扱っているテーマに普遍性があるからだと思います。SFや機械(サイボーグ)というニッチなジャンルではあるけれど、作品の軸には『人間とは何かとか、どうあるべきか、どのような存在なのか』という、いつの時代も人間にとって大切なテーマがあります」と答えた。
爆速で進化しているAIについて、クリエイターとして脅威はあるのだろうか。最後に、このような現代を、モコちゃん自身がどう捉えているかについても聞いてみた。
「二つのレイヤーで考えています。一つ目は現実的な話として、AIによってクリエイターとしての仕事が減ったり産業構造が変わったりしてきているので、世界全体で慎重に進めていく必要があるということです。
もう一つは芸術の意義に関して。私はAIによって脅かされるとは思っていないです。というのも、私にとって芸術作品を鑑賞する意義とは、この世界に自分とは別の視点があるということを知るためという部分もあります。なので、何を使って作ったかよりも、その作り手なりの視点が成立しているかが、もっとも大切だと思います」
(モコちゃん監督のインタビューはここまで)
『攻殻機動隊』モコちゃん監督に聞く「AI時代」 クリエイターとして思うこと (アニメNYCにて)(Yahoo! ニュース)
ヘッダーイメージ: モコちゃん監督。ニューヨークで8月に開催されたアニメの祭典「アニメNYC」にて。© Kasumi Abe
Text, photo and some video by Kasumi Abe 安部かすみ 本記事の無断転載禁止
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ヘッダーイメージ: モコちゃん監督。ニューヨークで8月に開催されたアニメの祭典「アニメNYC」にて。© Kasumi Abe
Text and photo by Kasumi Abe 安部かすみ 本記事の無断転載禁止
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