アメリカ西海岸、ワシントン州シアトル訪問記の続き。
短い滞在でも筆者が必ず訪れたい場所は、スターバックス第1号店だった。
シアトルには長年、スターバックス リザーブ® ロースタリーの1号店もあったが、昨年まさかのクローズに。業績不振による大量閉店が続いているスタバ。ロースタリーを閉めちゃうってよっぽどのことだろう。
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スタバのリザーブロースタリー1号店なき後、シアトルでは総本山の1号店に行くしかないでしょ!
入店に2時間待ち!スターバックス1号店

ホテルからすぐ近くのパイクプレイス・マーケットにあるスタバ1号店に月曜日午後に向かったのだが、なんと2時間待ちの大行列!
予約をとってくれるというので出直すことに。
2日後の水曜の朝に改め、この日はほかを観光することにした。
2日後に、いざ再訪問
そして気を取り直し、水曜日の午前8時半。
アポの時間に行くと、数人が店の前にいるだけ。5分ほどで入店できた。

店内は狭く、飲食スペースはない。ここではコーヒーの試飲をしたり、オーダーしたり、タンブラーやマグカップなどのグッズ類を購入したりする。
入店するなり、入り口近くのスタッフが明るく「おはよう」と挨拶して迎えてくれた。なんて気持ちの良いお店なんだ。
私はまず左側のカウンターに陳列されたグッズ類から偵察しようと思っていたのだが、入り口前のカウンターの男性スタッフがコーヒーを淹れながら、私に声をかけてくれた。
素敵な男性スタッフとの一期一会の出会い
「どんな味がお好みですか?」と聞かれたので、「ダークローストが好きです」と答えた。
「今お淹れしますね」と男性スタッフ。「ところで、あなたはニューヨークから?それともパリ?」
この質問には思わず笑ってしまった。
このアジア人に向かって、パリかニューヨークかという2択。しかも1つは当たっている(笑)。
「今はニューヨーク在住ですが、もとは日本出身なんですよ。ところでなぜニューヨークとわかったのですか?」と聞いてみた。
男性スタッフは「お召し物がエレガントだったので」と褒めてくれた(!)。「特にそのブローチが…」
世界に一つしかない大切なブローチ
私は感激した。私にとって特別なブローチに気づいてもらえたから。
「あぁ、ありがとう!アメリカのおばあちゃんからのものなのですよ」と答えた。
そう、これは友人のオハイオの祖母から生前いただいた宝物。
映画『タイタニック』の主演のおばあちゃんのようなビー玉のような美しい目をしたおばあちゃんだった。性格も優しくて穏やか、小柄で愛らしい雰囲気の方だった。
ブローチは後で調べると、ミッドセンチュリー(1942–1971年)のもので、大量生産の現代では信じられないほどディテールまで繊細で美しいアメリカン・ヴィンテージ。
夫が第二次世界大戦を戦い抜いた背景があり、初めて会う前に私が日本人であると聞かされ、一瞬戸惑いの表情を見せたらしいが、初対面では温かいハグをしてくださり、以降、いつも家族イベントに迎え入れてくれて親切にしてくれた。
ある時、ふと、これをあなたにあげるわと言ってとても素敵なブローチとイヤリングのセットをくださった。その場にいた友人もとても喜んでくれ、私は特に考え過ぎることもなく、素直にありがとうといただいた。おばあちゃんが天国に召されたと知らされたのは、それから数年して。
20年の年を経て今考えてみても、これって普通のことではない。おばあちゃんには娘(友人の母)が2人いらっしゃるのだが、ジュエリーの一つを赤の他人の私に託してくださった。生前の片見分けのつもりだったのか、知る由もなし。
そんな大切な品を失くすといけないので滅多につけることはなかったが、ジュエリーでもなんでも大切にしまっているだけでは「持っていないのと同等」とどこかで聞いて以来、ここぞっていうときにつけるようにしている。
この特別なシアトル旅のコーディネイトに加えるきっかけもあった。先日、ヒラリー・クリントンさんが講演会でシンプルな服装にブローチをつけているのを見て、なるほどあぁいうふうにつけるとより素敵なんだって学んだ。
このスタバのバリスタさんの5日前も、ニューヨークのホテルのロビーでクライアントを待っていたら、女性スタッフにブローチを褒められたばかりだった。元来ニューヨーカーは他人の服装を褒めるのがうまいが、その女性も「あなたのブローチとても素敵!」って気づいてくれて、その時もとても嬉しかった。
話をこのスタバでの会話に戻す。
私はバリスタの男性に「でも彼女は今天国にいるんですが…」と伝えた。
彼は「彼女は今、私たちと共にいます」と即答した。
私の話が聞こえなかったんだなと思い、もう一度言った。
「今天国なんです」
「今、私たちと共にいます」彼は繰り返した。
「え?」
彼はゆっくりとお湯をコーヒーフィルターに注ぎながら、自分はウクライナ出身だと言った。そして今このように思い出しているということは、その人が今ここに一緒にいると信じていると話した。


私はこの日、ブローチだけをつけていたわけではなかった。真珠のネックレスやイヤリングなど、ほかにもお気に入りのジュエリーを身につけていたのに、特にブローチが気づかれたのは不思議だった。
「そのブローチには彼女のエネルギーが宿っています。だから光り輝いている」
なるほど。「魂」など目に見えないものの存在(亡くなっていようが生きていようが)は私も、これまで人生を通じて知っているので、彼の言っていることはすんなり理解できた。そしておばあちゃんがここに一緒にいると気づかせてくれた。
「そのおばあさんはNikkei(日系)ですよね!?」
どうやら私の血縁の祖母と勘違いしたみたい。
「日系ではないです。アメリカの友人のおばあちゃんです」
彼はヘェ〜と興味深く私の話に耳を傾けた。

このバリスタの男性は、只者ではなかった。
会話の中で、天照大御神や具体的な年表の年など日本の深い歴史の話もしていた。その知識はお世辞抜きで「博士レベル」。私は圧倒された。
シアトルの日本庭園や、上皇后美智子さまが美智子妃殿下時代の1960年に植樹した陽樹、Betula Pendula(ベツラ・ペンドゥラ)など、シアトルの日本ゆかりの地を丁寧に教えてくれた。
私は淹れたてのコーヒーを飲みながら、彼の話に聞き入った。
10 〜15分くらいすると別のスタッフがやってきて、そろそろ彼は別のシフトに入る時間のようだ。彼は「とても楽しかったよ」と言って、ピンク色のポストイットに名前を書いて渡してくれた。
「IVAN」
イヴァンさんは「最後に一緒に写真撮ろうよ」と言ってくれた。普段友人ではない人と一緒に写真を撮ることはない私だけど、この時は違った。交代で互いのケータイで写真を撮り合った。↓

考え方はいろいろあると思う。この話を聞いて、彼はスタッフだから客に丁寧に接するのは当たり前という考えの人もいるかもしれない。でも私の直感では、私たちはスタッフと客を超えた何か共通するものがあった。また、彼はきっとこの先どこに行こうとも成功するだろうとも思った。
興味深い会話で気持ちの良い1日のスタートを切ることができた。感謝。
さぁ、イヴァンさんとの楽しい時間が終わり、グッズコーナーでも見るかと思い、棚に向かうと、別の女性客もブローチを褒めてくれた(!)。
この日はよっぽどおばあちゃんも一緒に喜んでくれたみたい。

この日の戦利品↓

コーヒーは、Pike Place(パイクプレイス)コーヒーをオーダーした。スモールトークをしながら別のスタッフが目の前で丁寧に入れてくれた。景色が綺麗な水辺の広場でいただいたが、とても美味しかった〜。
(そもそも、アメリカのスタバで「One Pike, please」という注文の仕方があるものの、意味がいまひとつわかっていなかったが、なるほど。スターバックス1号店があるパイクプレイス・マーケットにちなんだコーヒー「Pike Place Roast」のことだったのか)
おばあちゃんが大切なものを託してくれたとき、私が何年も先にそのブローチを身につけて旅をし、そこで出会った人に褒められることまで想像していなかったかもしれない。でも今も私の人生の一部で、何年経ってもこのような思いがけない会話のきっかけになり、日常に小さな喜びを運んでくれる。
スターバックス1号店のスタッフとの素敵な一期一会のひとときは、私に大切なことを気づかせてくれ、忘れられない思い出になった。
ヘッダーイメージ:© Kasumi Abe
Text and photos by Kasumi Abe 安部かすみ 本記事の無断転載禁止
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