メキシコとの国境を歩いてアメリカに入国した移民のタクシードライバーとの出会い

ニューヨーク市内で先日、クライアントと共にイエローキャブに乗ったところ、興味深いドライバーと出会った。

彼は20代くらいの若い青年だった。

記憶が曖昧だが、おそらく彼から“Where are you from?”と聞かれて会話が始まったんだと思う。私はクライアントを指して「日本から来たのよ」と答え、「私ももともと日本出身だけどね」と答えた。

そのような質問には質問返しが当たり前。「あなたは?」と聞き返す。彼の見た目からインドやパキスタンあたりかなと思ったら、やはりインド出身だった。

ちなみにニューヨークではタクシー、地下鉄、レストランなどでこのように見知らぬ人同士で会話が始まるのはごく日常の光景だ。

日本から到着したばかりの人に「知り合いだったのですか?」と聞かれることが多いが、いいえいいえ。ニューヨークでは普通のことなんですと教えると、「(フレンドリーな気質の)大阪みたいでいいですね」と大抵言われる。

確かにそうかもしれない。私もスーツケースをたくさん抱えて一人で大阪に降り立った時、街中で何人かから大丈夫ですか?って声をかけてもらったことがある。フレンドリーでニューヨーカーと似ていると思った。

海外では知らない人とのやり取りは慎重に、と思い込んでいる日本人は多いかもしれないが、半分当たっていて半分当たっていない。ニューヨークでは動物的直感を働かせ、瞬時に判断し、「この人は大丈夫」というゴーサインが出たら、遠慮することはない。気晴らしに見知らぬ人との会話も楽しめる街なのである。

「アメリカ・メキシコ国境を歩いて渡った」

とにもかくにも、このような経緯でフレンドリーなインド出身のドライバーと自然に会話が始まった。

彼は「僕は国境を越えてきたんだ」と唐突に言った。「え?あの、バイデン政権の時にニュースになっていたあの時?」と聞き返すと、彼は大きく頷いた。

彼曰く、自国のインドからロンドンに渡り1年住んだというが、それほどお金を稼げないことがわかり、インドに一度戻ってトルコ経由でメキシコに渡ったそうだ。

「アメリカが1番稼げる」と彼は言った。「今、たくさん稼いでいるでしょう!」と言うと、彼はニヤリと笑った。

「僕はラッキーだった。2万ドル(約300万円)を(コヨーテに)払う人もいるけど僕は払うことなく1日歩いて国境を渡ったんだ」。彼は自慢げに話を続けた。

彼曰く、アメリカ西海岸の国境に到着後すぐに(国境警備隊に)逮捕され、ファシリティーに移送されたという。その後、書類へのサインを求めら、サイン後はどこに行く予定かと聞かれ、ニューヨークだと伝えた。自分で飛行機を手配し、ニューヨークに到着。現在は移民が多く住むクイーンズ区のアパートを友人とシェアで住み、ドライバーで生計を立てているのだそうだ。

筆者はてっきり違法労働かと思いきや、ニューヨークではきちんと労働許可を得て、正式にイエローキャブのタクシードライバーとして働いているという。

2000年生まれの25歳。若いのに、なんというたくましさ。

2023年9月に発信した「10万人の移民が殺到「NYを崩壊させる」と市長は戦々恐々。受け入れ超過に市が悲鳴」の「その後の、ある一人の物語」である。

この記事は、日本でも移民が増えていた時期ということで大変注目され、Yahoo! ニュース エキスパートのMVA(Most Valuable Article)を受賞した。

nyc taxi
Photo by Yunuen Caballero on Pexels.com

彼はまるで武勇伝でも語るように話を続けた。きっと生まれながらにしてめちゃくちゃフレンドリーかおしゃべりか、第三者の誰かに自分のこれまでの話を聞いて欲しかったのかもしれない。

アメリカ政府からの新生活のサポートはあったのかと聞くと、そのようなサポートは一切なかったという。だから家賃や食物の補助も一切なし。ただし、「ニューヨークの健康保険は無料」だという。この医療費の高いアメリカにおいて、それは本当にラッキーなことだ。

25歳、人生はこれから。異国で毎日お金を稼ぎ、これから誰かと出会って結婚し、アメリカ国籍の子どもができる、そんな未来は十分予想可能だ。ただ彼曰く「トランプが嫌い」で「将来はどこに行くかはわからない」そうだ。


移動中、ほかにもいろんな話をした。以前筆者は、インド南西部出身の友人との会話からこのような記事を書いた⇩

筆者は友人から聞いた、ありったけの知識をフル活用して会話を続けた。例えば「インドって、他人を触っちゃだめなんしょう?友人が言っていたよ」と言ったら、「別に触ってもいいよ。触っちゃダメって、古いマインドだよな」と鼻で笑った。

私のクライアントが「インド人は手でカレーを食べるんでしょう?」と言えば、彼は大きく首を横に振り、「カレーはスプーンで食べるよ」と笑った。

アメリカ以上に多種多様な文化、言語、宗教がある国と聞いていたが、やはり「インド」と一括りにできない国のようだ。

到着して楽しいRideだったと伝え、ありがとうとチップを渡した。最後に名前を聞いて別れたが、ものの数秒後に忘れてしまった。次に会ってもわからない見知らぬニューヨーカーとの出会い。これも一つのニューヨークの物語。

ヘッダーイメージ: イメージ写真

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Text by Kasumi Abe 安部かすみ 本記事の無断転載禁止

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