ニューヨークでの小さな親切とiPadの奇跡(2025年の振り返り)


“Have a blessed day”

先日、コワーキングスペースからの帰宅前にトイレに寄ったら、高校生らしき今時の女の子4、5人が手洗い場の前でワイワイキャッキャッと楽しげに騒いで鏡を陣取っていた。私が個室から出てきて手を洗おうとしたら一人がパッと退いてくれ、ソープ口に手を出した私に別の一人が「ソープは切れているよ」と教えてくれた。すると別の子が自分のピュレル使う?と言ってくれたのでありがとうと言って手を差し出すと、残り少ないピュレルを絞り出してくれたのだが、私はまだ出るのかなと思って手を引っ込めずにいたら「まだいるのね」と言ってさらに絞り出し。私は「あなたはとても親切です」とお礼を言って去ろうとしたら、「どういたしまして。Have a blessed day!」と声をかけてくれたのでした。

帰りしな、フレンドリーで親切な若者が多いよねとしみじみ思い、幸せな気持ちになった。Have a blessed day(祝福された一日を)ってHave a great dayほど使い古されてもいないし、直感的になんかいい言葉だなって感じて気に入りました。このように10代の子達にいい言葉を教えてもらうこともあるのです。早速道ゆく誰かに使ってみよう。

凶悪事件も相変わらず多いけど、ニューヨークもなかなか捨てたもんじゃないです。そう言えばと、今夏の別の出来事も思い出した。いつか書こうと思ってブログの下書きフォルダに入れていたものだが、今年あったことは今年中にお伝えしておきたい。


空港でiPad紛失の日本人観光客――その顛末

2025年8月某日。ニューヨークに到着したばかりの日本人旅行者(女性、仮にAさんとします)からある依頼を受けた。その日の朝にJFK国際空港のターミナル1に到着したAさんはiPadをそこに置き忘れてきたという。空港に連絡しようにも英語ができないし、海外の事情がわからず困っていて助けてもらえないかという依頼だった。

話を聞いてみると、Aさんがターミナル1にいたのは午前11時ごろで、iPadを椅子に置いてきたということだった。私に依頼があったのは夕方で、すでに6時間以上経過していた。私はその日の夜、自分が講師を務めるオンライン勉強会の予定が入っていて、リハーサルも含めると8:30PM-10PMは対応できないことを説明した上で、まずは依頼の正式な申し込みを待っていると伝えた。

これまでの私の経験から、正直そのiPadが出てくる見込みはあまりないかもしれないと思っていた。自分もモノを紛失した経験が何度もあるが、出てきたためしがほとんどない。日本製のおしゃれな革の手袋とかカメラバッグとか、数時間後に探しに行っても影も形も残ってなかった。中南米での話だがロストバゲージの経験があり(盗まれたのだろう、結局出てこなかった)、ちょっとしたPTSDです。私だけのケースではなく、一般的に海外では紛失物はほぼ出てこないと思ってもらって間違いない。

Aさんもこの間にネット検索したようで、私が説明せずともそのような事情は知っていた。それでもダメもとでの依頼だった。AさんからiPadの特徴なども含め、正式なお申し込みを待っていたが、ニューヨーク初日の観光で忙しかったのかすぐには返信がなく、ほかの手段が見つかったのかもと思っていた。結局、正式な申し込みがあったのが私の勉強会直前だったので、私が空港のLost and Foundに電話できたのは、勉強会が終了した10PM以降。その時点で、iPadがAさんの手元から離れて 11時間くらい経っているわけです。

半信半疑でLost&Foundに電話をかけたものの、夜間のためか電話には誰も出ず。Aさんに明朝またかけてみますと返事し、最後にダメ元でもう一回電話してみたら、声からして若い男性担当者が出た!私が(自分のではないという)事情とiPodの特徴を説明したら「それらしきものがある」と言うではないか!!!担当者はご丁寧に椅子の上で発見されたiPodの写真をケータイに送ってくれて、Aさんに転送したらやはりAさんが紛失したもので、すごく喜んでくれ私まで幸せ〜な気持ちになった。その担当者も喜んでくれた。Aさんが空港に取りに行ったのは帰国の際の3日後とかで私は最後まで気が抜けないと思っていたが、Aさんから無事に受け取ったという嬉しい知らせが届き、胸を撫で下ろしたのでした。考えてみれば時々、地下鉄で数千ドル入りの財布が見つかり警察に届けられたっていうニュースを聞いたりするし、今回は空港という場所も不幸中の幸いだったのかもしれません。

これは一つの事例ですが、ニューヨークという慣れない土地で誰かのお困りごとがあって、自分が必要とされるケースも増えていて、最後に笑顔になってもらってその対価として報酬をいただくのはなんとも嬉しいことです。そんな喜びを感じることが今年は多かったように思います。


Text by Kasumi Abe 安部かすみ  本記事の無断転載禁止

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