アメリカは今日、7月4日が独立記念日。人々はこの日、自由や独立という理念、その礎を築いた人々の志と、その理念が今日まで受け継がれてきたことを讃え、家族や友人らとバーベキューや花火などを楽しみながら祝う。
今年は独立宣言から250年にあたり、全米各地で例年の祝賀イベントに加え、特別イベントも行われる。
ニューヨークでは恒例の花火大会がバージョンアップして行われるほか、カウントダウンイベントや船舶パレードなど各種催し物が満載だ(ただし、アメリカ東部の記録的な熱波の影響で中止となったイベントもある)。

しかしその独立宣言から2ヵ月も経たないうちに、独立戦争の大陸軍総司令官、ジョージ・ワシントン率いる大陸軍がバトル・オブ・ロングアイランド(ロングアイランドの戦い)で敗北するなど、その後も激しい戦闘は続いた。
1781年には、ヨークタウンの戦い(現バージニア州)でイギリス軍の敗北が決定的となり、1783年にパリ条約でイギリスがアメリカの独立を正式に承認した。1789年にはジョージ・ワシントンが初代大統領に就任。このように、段階的にアメリカ合衆国の国家体制が形成された。
13植民地が共同で独立国家になると宣言した(=自由と独立という理念を世界に示した)この日を今でもIndependence Day(独立記念日、通称ジュライフォース、フォースオブジュライ)として人々が盛大に祝うのは、アメリカにとって自由と独立がいかに重要であるかの表れだろう。NYの独立戦争ゆかりの地
アメリカ独立記念日に関する歴史的なニューヨークの場所と言えば、ロウアー・マンハッタンにあるフランセス・タバーン(Fraunces Tavern)がその一つにあたる。
18世紀に建てられマンハッタンに現存する最古級の建物が今も保存され、現役のタバーン(居酒屋)および博物館として人々に受け継がれている。
建物はもともとデ・ランシー家(Stephen De Lancey) が1719年に邸宅として建設したもので、火災と修復を経て現在に至る。

1階は1762年開業のタバーン(レストラン&バー)になっている。中は驚くほど広く、ダイニングルーム、ウィスキーバー、ピアノバーなどに分かれている。ニューヨーク観光の際には、食事を兼ねて訪れるのもおすすめだ。

2階と3階はアメリカ独立戦争と、合衆国誕生や自由への道筋などを紹介するフランセス・タバーン博物館(Fraunces Tavern Museum、1907年設立)だ。アメリカ独立宣言250周年にまつわる特別展示「Liberty 250」が、昨年より開催中。

この歴史的な建物を管理するサンズ・オブ・ザ・レボルーション(Sons of the Revolution)によると、13植民地および独立戦争中、ニューヨークはフィラデルフィアに次ぐ規模の都市で、軍人や愛国派の重要拠点だった。そして、後に初代大統領になる(建国の父の一人として知られる)ジョージ・ワシントン将軍をはじめ、その時代の指導者がフランセス・タバーンで重要な会合や会食を行った。
特にフランセス・タバーン博物館に保存されているロングルームは必見だ。同団体の資料をもとにかいつまんで説明すると、1776年6月18日、ニューヨーク植民地議会(NY provincial Congress)が13植民地の防衛成功を祝うため、ワシントン将軍と将校たちのために祝宴をここで開催した。また1783年9月3日にパリ条約が署名され、11月25日にニューヨークから英軍が完全撤退し、12月4日にワシントン将軍が独立戦争終結に際し将校たちとの送別の宴を開くなど、歴史的に重要な会合の舞台となった場所でもある。

博物館には、ジョージ・ワシントンの遺品として毛髪や歯の断片も展示されている。
「現代人には奇妙に感じられますが18、19世紀には著名人の髪の毛を記念品や形見として保存する文化があったのです」と同団体のスタッフ。「現代人が有名人に会ったらセルフィーやサインをお願いするように、当時の人々は英雄に手紙を書き『あなたを尊敬している。髪の毛一房を送ってくれないか』などとお願いしていたんですよ」。

アメリカの人々にとって国家の独立や個人の自由とは
アメリカの人々にとって独立記念日とは何だろうか。真の自由、そして独立とは何を意味するのだろうか。
「アメリカ250」の祝賀イベントに先立ち、筆者はヘレン・ケラー生誕146周年の6月27日、ニューヨークのカーネギーホールに、視覚障害者の自立を追ったドキュメンタリー映画『Possibilities』(ポッシビリティーズ)を観に行った。
視覚障害者が日常生活で困難を乗り越える力や自立、自由への可能性がこの映画の中で描かれており、見終わった後に、独立や自由とは国家単位だけでなく私たち一人一人にも当てはまるものだと、改めて考えさせられたのだった。というのも筆者は若い頃、自立や自由について葛藤を抱えた経験があるからだ。

視覚障害者団体、American Foundation for the Blind(アメリカン・ファンデーション・フォーザ・ブラインド)のトニー・スティーブンズ(Tony Stephens)さんにとって自由とは何かを問うと、彼が知るヘレン・ケラーの言葉(“明日という言葉には無限の可能性がある。そして自立とは可能性へ続く道を阻むものは何もないと知ることだ”という趣旨の内容)を引用した上で、こう話した。
「アメリカの視覚障害の私にとって自由とは、何でも起こりうる(できる)という可能性そのものです」
映画監督のビル・サリン(Bill Sarine)さんは、自由について次のように語る。
「自由とは希望と機会をもたらすもの。アメリカだけのものではなく、どこにいても、どのような形であっても、世界中の人々が持つべき自らの幸福や人生の意味を追求する権利だと思います」
前述のサンズ・オブ・ザ・レボルーションのエグゼクティブ・ディレクター、スコット・ドワイヤー(Scott Dwyer)さんは、「真の自由とは、抑圧や過剰な権限からの脱却を意味するものだった。独立戦争から生まれた重要な理念であり、我々にとって非常に大切なものです」と言った。
「独立への宣言があったからこそ独立戦争終結へとつながった。よって私たちは今もそれを祝い続けているのです」
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Text by Kasumi Abe 安部かすみ 本記事の無断転載禁止

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