NASA(米航空宇宙局)が主導する有人月探査の「アルテミス計画」。10日、無事に太平洋に着水し帰還したArtemis II(アルテミスII)のクルーが12日、祝賀式典に姿を見せた。
アルテミスIIは「単なる月周回」ではない。70年代のアポロ計画以来、人類が半世紀ぶりに“深宇宙”へと踏み出す、極めてリスクの高い有人ミッションだった。いわば彼らは、危険を伴う任務をやり遂げ、無事に地球へ帰還したヒーローたちなのだ。
宇宙では何かが起こっても、当然ながら誰も助けには来てくれない。筆者は(レベルは違うが)これまでの自らの経験を通して、山岳そして大海といった大自然に向き合うたび、その雄大さと美しさの裏に潜む危険も常に意識することがあるのだが、宇宙はそうした自然の脅威を遥かに上回る環境であり、彼らはそのような環境で偉大なるミッションを成功させた。その勇気に心から敬服する思いだ。

暗闇に囲まれた“小さな”地球
リード・ワイズマン船長は「ここにいる誰も、我々4人が体験したことを知ることはない。それは私の人生で最も特別な出来事だった」「簡単なことではなかった。打ち上げ前はまるで最高の夢みたいに感じたが、(地球から)20万マイル以上離れた場所にいる時は、ただただ家族や友人のもとに(無事に)戻りたいと思うものだ」「人間であることは特別なことであり、地球にいることは特別なことだ」
クリスティーナ・コック(ミッションスペシャリスト)は「私たちが小さな地球を見た時、必ずしも(見えたのは)地球だけではなかった。それを取り囲むブラックネス(真っ黒の空間)だった。地球は宇宙に何の邪魔もなくぶら下がる救命ボートに過ぎなかった」
4人は、米人気トーク番組「レイトショーwith スティーブン・コルベア」にも出演した。
人類が月に戻った理由について、ワイズマン船長は、このミッションが将来的な火星探査に向けた重要なステップになるからだと説明した。
司会のスティーブンは、カナダ宇宙庁のジェレミー・ハンセン(4人のうち唯一のカナダ人)に、「あなたがカナダ人だから向こう側に座ってもらったわけではありません」とジョークを飛ばした。
またジェレミーは、NASAというアメリカのミッションに行き着いた理由を問われると「理由はいくつかあるが、もしミッションで何か問題が起きたら、NASAはカナダのせいにできるでしょうから」「あぁなるほどね。カナダはただ『ごめんね』って言うだけだね」とジョークを飛ばし合い、会場は大爆笑の渦へ(本当の理由は、カナダとアメリカのグローバルなパートナシップを築きたいからだそう)。
私は特に「小さな地球が暗闇に囲まれていた」というクリスティーナの言葉に一番ロマンを感じた。
人間のスケールでは日々さまざまな出来事に揺れ、地球規模でも紛争や戦争が絶えない。しかし宇宙という視点から見れば、そのすべては、かけがえのない地球という一つの小さな存在の上で起きているにすぎない。そう考えると、私たちの悩みなんてあまりにも小さく、些細なことで争い傷つけ合うことに虚しささえ感じるし、この地球に生を受け生かされていること、同時代に生きる人々の存在は奇跡のように思える。美しい地球をこれ以上傷つけない、そして戦争なんて起きない世界であってほしいと強く願わずにはいられない。
P.S. この話題ではないが、最近アメリカの政治ニュースを報じた日本メディアの見出しで(北米&欧米の真の文化を知らないんでしょうね)翻訳機からそのままコピーしたかのような、ジョークを真に受けたものが散見され、アメリカに住む者として辟易するばかり。“日本脳”で世界を見るからそういうことになるのです。日本とは“真逆”の文化や事情を知らずして、真のアメリカを理解して伝えることなどできないはずです。
ヘッダーイメージ: オリオン宇宙船と宇宙飛行士のクリスティーナ・コック。2026年4月11日撮影。 (c) NASA/Bill Ingalls
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Text by Kasumi Abe 安部かすみ 本記事の無断転載禁止

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