トランプ大統領は4日、改めて国家安全保障の観点からグリーンランドを必要としている考えを示した。
この背景について、米英報道をまとめる。
この報道のポイント
- デンマークの自治領・グリーンランドが再び地政学的に注目されている。
- トランプ大統領は「国家安全保障の観点からグリーンランドが必要」と記者団に語った。
- ルビオ国務長官はアメリカの計画について、グリーンランドを「侵略」するのではなく「買収」することだと語った。
- これまでもグリーンランドの取得に意欲を示してきたトランプ氏が、その実現に向け米軍の活用を選択肢として排除していない考えを示した(ホワイトハウス発表)。
- モンロー主義についてのホワイトハウス発表
トランプ大統領は同日、エアフォースワン(大統領専用機)内で行ったベネズエラ情勢についの囲み取材で、記者にグリーランドについて突然質問された。
大統領はなぜここでグリーンランドの話になるのかとして「グリーンランドについては(今は)語りたくない。(後日)心配することだ。今はベネズエラ、ロシア、ウクライナについて話そう」と述べたが、記者が質問をし続けると、以下のように述べた。
「グリーンランドについてはこう言っておく。国家安全保障の観点から、我々はグリーンランドを必要としている」「戦略的にだ」「今、グリーンランドの至る所はロシアと中国の艦船で埋め尽くされている。デンマークでは対処することができない」
(原文:Right now, Greenland is covered with Russian and Chinese ships all over the place*)
編注:「埋め尽くされている」というのはトランプ氏の誇張表現であり事実確認された軍事状況の説明ではないものと思われる。
トランプ大統領の発言には軍事力の選択肢も含むため、大西洋を挟んだ緊張をさらに高めるものとなっている。ヨーロッパ全土に警鐘を鳴らすものとして、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相はアメリカがグリーンランドを占領すればNATO軍事同盟の終焉を意味するだろうと警告した。
グリーンランドとは?
北極圏に位置し、アメリカとロシアの間の北大西洋・北極海に面している世界最大の島(大陸ではない)。
面積は約220万平方キロメートルで、ドイツの約6倍の広さ。人口は約5万6000〜7万人と世界でもっとも人口密度が低い地域の一つ。
約300年にわたり約3000km離れたデンマークの植民地・自治領として統治されてきた。第二次世界大戦中、ナチスがデンマーク本土を占領後、アメリカはグリーンランドに進駐し、気象観測所やラジオ通信施設を設置した。1953年にデンマーク王国の一部となり、グリーンランドの人々はデンマーク国民となった。
人口の多くは先住民の(見た目はアジア人に似た)イヌイット族で、主に首都ヌーク周辺の南西海岸沿いに居住。経済は漁業に依存し、デンマーク政府からの補助金に支えられている。

グリーンランドは地政学的位置の優位に加えて、鉱床や希土類元素(レアアース)など未開発の原料が豊富にあることでも知られている。地球温暖化により巨大な氷床が溶けるとこれらの資源はより利用しやすくなるかもしれない。これらの重要鉱物やレアアースは風力タービン、電気自動車、エネルギー貯蔵技術、国家安全保障アプリケーションといった新興技術において不可欠な要素と言われている。
グリーンランドは、経済的な潜在力と戦略的価値の両面で、今後ますます注目される土地の一つだと見る専門家もいる。
米CNBCは、昨年中国はレアアースのほぼ独占的な供給体制を利用し、アメリカに圧力をかけようと繰り返し試みたと報じている。
トランプ大統領は囲み取材で「グリーンランドが必要なのは国家安全保障のため」「グリーンランドは至る所にロシアと中国の船で覆われている」と述べた。
北米と北極の間に位置するグリーンランドは、ミサイル攻撃の早期警戒システムや船舶監視に最適な立地だ。グリーンランド西北部に位置するアメリカ宇宙軍の最北端の軍事基地、ピトゥフィク宇宙基地(Pituffik Space Base)は第二次世界大戦以降にアメリカが運営し、今もミサイルの監視を行なっている。
アメリカは次世代兵器に対抗するため、ロシアにより近い場所に防空網を展開する必要があり、それを可能にするのがグリーンランドである。
ただし国民感情は複雑だ。ある世論調査によるとグリーンランドの人々は「我々は売り物ではない」とアメリカによるコントロールに対し圧倒的な反発を表明し、大多数がデンマークからの独立を支持しているということだ。
英BBCは8日、米ホワイトハウスがグリーンランドの買収の可能性を積極的に協議していると報じた。トランプ大統領が国家安全保障上の理由から同島が必要だとして米軍の活用も排除しない考えを示唆したが、この要求はグリーンランドのリーダーおよび同島が半自治領となっているNATO加盟国・デンマークによって拒否されたと伝えている。
フレデリクセン首相とイギリスのキア・スターマー外相は、NATO加盟国のフランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペインの首脳らと共にグリーンランドは国民のものであり、両国関係に関する事項はデンマークとグリーンランドのみが決定できるとする声明に署名した。
トランプ大統領は2019年、最初の大統領任期中にグリーンランドの買収を打診したものの、同島は売り物ではないとしてデンマーク側から即座に拒否されていた。こうした経緯を踏まえ、アメリカのグリーンランドへの関与が今後どのようになるのか国際社会の関心が集まっている。
モンロー主義
トランプ大統領のベネズエラ攻撃やグリーンランドへの関心(&66の国際機関などからの脱退方針を示す)を伝える記事では、アメリカの国家安全保障政策を歴史的に説明するために「モンロー主義」(&ドンロー主義と呼ばれる彼の外交観)の解説が増えている。
このモンロー主義について2025年12月2日、ホワイトハウスはこのような発表をしていたので、本稿でシェアする。
America 250: Presidential Message on the Anniversary of the Monroe Doctrine
(以下一部抜粋)
In the centuries since, President Monroe’s doctrine of sovereignty has guarded the American continents against communism, fascism, and foreign infringement, and as the 47th President of the United States, I am proudly reasserting this time-honored policy. Since I took office, I have aggressively pursued an America first policy of peace through strength. We restored U.S. privileged access through the Panama Canal. We are reestablishing American maritime dominance.
数世紀にわたり、モンロー大統領の主権原則はアメリカ大陸を共産主義、ファシズム、そして外国からの侵略から守ってきました。そして第47代大統領として私はこの政策を誇りを持って改めて表明します。私は就任以来、力による平和という「アメリカ第一主義」政策を積極的に推進してきました。パナマ運河における米国の特権的アクセスを回復させました。そして、アメリカの海上覇権を再び確立しようとしています。
My Administration is also halting the flow of deadly drugs flowing through Mexico, ending the invasion of illegal aliens along our southern border, and dismantling narco-terrorist networks all across the Western Hemisphere. To defend our Nation’s workers and industries, I recently secured historic trade deals with El Salvador, Argentina, Ecuador, and Guatemala, allowing greater and more streamlined market access. Reinvigorated by my Trump Corollary, the Monroe Doctrine is alive and well—and American leadership is coming roaring back stronger than ever before.
私の政権はメキシコ経由の致死性のドラッグの流入を阻止し、南部国境沿いの不法移民の流入を食い止め、西半球全域の麻薬テロ組織を解体しています。我が国の労働者と産業を守るため、私は最近エルサルバドル、アルゼンチン、エクアドル、グアテマラとの間で歴史的な貿易協定を締結し、より広範で円滑な市場アクセスを実現しました。私の「トランプコロラリー」(派生原則)によって再び活性化されたモンロー主義は健在であり、アメリカのリーダーシップはかつてないほど強力に復活しています。
Today, we renew our pledge to always uphold American sovereignty, security, and safety first. Above all, we vow to protect our cherished national legacy of republican self-government against all threats, foreign and domestic.
本日、私たちは改めて常にアメリカの主権、安全そして国民の安全を最優先に守ることを誓います。何よりも私たちは外国・国内を問わずあらゆる脅威から、共和制による自立的な政府という大切な国の遺産を守ることを誓います。
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(Updated: 1/27/2025)
ヘッダーイメージ:グリーンランドのイメージ写真
Text by Kasumi Abe 文責・安部かすみ 本記事の無断転載禁止

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