NY生活の日々の一片…ちょっと勇気を出してやってみた「実験」。地下鉄でのある出来事(後編)

  • Photo: 友人の家のルーフトップからの景色(記事とは関係ないですが)。(c) Kasumi Abe

(前回からの続き)


地下鉄でのある出来事

New York

私は地下鉄の中では大体スマホを見ているか本を読んでいるか瞑想のようにボ〜としている。その日何をしていたかは忘れたが、とにかく覚えているのは、向かいの席に座っている男性が突然叫びだしたこと。

なんだなんだ?と見ると、バギーぽいジーンズを履いた40歳くらいの男性だった。黒髪で、黒人でも白人でもアジア人でもない人。

電車が駅に停車時、降車しようとした女性に向かって、その男性が呼び止めていた。どうやらその女性がシートにケータイを置いたまま降りようとしていたようだ。その女性はケータイを取りに戻り「あぁ、ありがとう!」とさっとお礼を言いながらホームへ飛び降りた。すべてが一瞬の出来事。

私は隣の中南米系の年配女性と目が合い「これがリアリティよね」と言った。「ニュースでは悪い出来事しか流れてこないけど、こうやっていいこともちゃんと起こっているよね」と。その女性は本当よねと頷いた。私は自分のケータイを指して「これは古いから誰も持っていかないけどね」とジョーダンを言うと女性は笑みを浮かべた。目の前の男性に私たちの会話が聞こえていたか否かは不明。

悪いニュースしかほぼ流れてこないというのは本当。だからニューヨークを訪れた日本人観光客は町歩きや地下鉄移動をしながら異口同音にこのように言う。「ビビってましたが意外と安全そうですね。人も優しいし安心しました」。

閑話休題。地下鉄のその男性はしばらくすると、乗車して彼の隣に座った女性にも指を指しながら何かを伝えていた。耳を攲てると、女性の鞄が空いてるから気をつけてねって注意を促したかったようだった。

私も経験があるからわかるけど、カバンがパカ〜って開いている人を見ると気になるし伝えたくなるものです。逆に赤の他人から伝えられたこともある。伝える方は何のメリットもないし、ちょっとした勇気も必要です。でもその男性は躊躇なく、他人のために何かをしてあげていた。

私は再び隣の南米系の女性に「彼はいい人だね」と言った。私はその男性と少し目が合ったが会話はなかった。怖そうな感じでもないけどフレンドリーさも感じられない表情だった。少しすると南米系の女性は降車した。互いに「いい一日を」と挨拶し合って。

電車は42丁目のタイムズスクエア駅に近づいていた。私が降りる駅だ。

私は自分が電車を降りるタイミングでこの男性に、思いを伝えたい気持ちにかられた。電車の移動中はなかなかタイミングが見つからなかったが、自分が席を立つタイミングでさっと伝えようかという気になった。いわゆる「告白」ですよ。まぁ別に声をかけなくても良かったんだけど、彼の行いを見て温かい気持ちになったから。YouTubeで「与えること」の重要性について観た後だったし(与えるのは金品でなく言葉でも良いという話だった)。また勇気を振り絞って行動した結果、どんなリアクションがあるか「実験」してみたくなった。

私が席を立とうかという時、その男性も同じ駅で降りるようで席を立ち、ドアの方に向かった。私も彼の近くに移動すると目が合ったので、勇気を振り絞って声をかけてみた。

You seem like a good person!(あなたはいい人そうですね!)

彼は一瞬ぽかんとした顔をした。自分は英語があまりわからないと言った。

停車して電車から同じタイミングでホームへ移動しながら、私は身振り手振りでこう伝えた。

I saw you and you seemed like a nice person. あなたのことを見ていましたが素晴らしいです。

It makes me happy. God watch over you. (あなたの行いを見て私も幸せな気持ちになりました。神様は見ています)と、天井を指しながら伝えた。

We have different gods, but your God watches over you. (お見通しです。私たちの神はおそらく違うだろうけど、あなたの神はあなたの行いを見守っています)

彼はじっと聞いていて、「ありがとう!」と大きな笑顔になった。英語がそれほどできないということだが、身振り手振りで伝えたかったことはなんとか伝わったようだ。

日々のニューヨーク生活でこのように知らない人同士が会話することはよくあって、私は普段、日本から来た観光客に「知り合いだったんですか?」と聞かれることがよくあるが、いえいえ全く知りません(笑)。この街では知らない人同士でも2、3言葉を交わして、持ち物を褒め合ったりして(ナンパとかでもなく)サッと別れるのがNY流(以前、これは欧米の文化かと思っていたら、ヨーロッパや中東出身の友人が自分の国では知らない人同士で会話しないと言っていたので、移民の国・アメリカならではのよう)。

よってこれで終了となるのが普通の流れだけど、彼が私に「あなたはどこの出身?」「名前は?」と尋ねてきた。そんな流れで軽く自己紹介し合った結果、彼はモロッコ出身のモハメッドさんということだった。「私にもモロッコ人の友人がいるのよ。いつか行ってみたいわ〜」などと軽く会話して、Nice to see you! God bless you. と言って別れた(God bless youて言葉はもう会えなくなった親友から当時よくかけてもらっていた言葉で、自分にとっては特別な言葉。ここぞっていう時に使っています)。階段上がった後も「じゃね!」って声が聞こえたので振り返ると、彼が笑顔で手を大きく振っていた。

ニューヨークに何の目的で来てこの先どのくらいいるのか、何もわからないけど人の良いことだけはわかったモハメッドさんとの、短いけど実にニューヨークらしい一期一会の出会い。


Text by Kasumi Abe 安部かすみ  本記事の無断転載禁止

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