NY中心地・タイムズスクエアで無差別死傷事件。米警察は発砲の際「なぜ脚を狙わないのか?」米在住記者が解説  

ニューヨークのタイムズスクエアで8月31日、女が突然、2人をナイフで刺す事件が起きた。容疑者の女は49歳のパメラ・シスネロス(Pamela Cisneros)。その後、警察官によって射殺された。

事件は午後4時30分ごろ、41-43ストリートと七番街付近で発生した。女は2本の(うち1本は包丁サイズに見える)ナイフで突然通行人を襲撃した。

地下鉄の駅を出て妻と共に横断歩道で待っていた68歳の男性が腹部を刺され負傷。32歳の女性も腹部を刺され、搬送先の病院で死亡が確認された。2人が襲われたのは、わずか約20秒の間だったという。

殺害された女性はエリン・ピアセンティ(Erin Piacenti)さんで、バンクオブアメリカのヴァイスプレジデント(日本語メディアで「副社長」と書かれているが、ヴァイスプレジデントは日本のいわゆる「副社長」とは違う)。

エリンさんは銀行で働き始めて2年足らずで、結婚2周年をお祝いをしたばかりだったという。この日は帰宅途中に襲撃されたようだ。詳細

犯行後、容疑者の女は警官に囲まれ、約4分間にわたってナイフを捨てるように繰り返し警告されたが、それに従わなかったため、テイザー銃が使用された。容疑者はその後、ナイフを手にしたまま警官に向かって進んでいったため、2人の警官に発砲された。

この一連のシーンを撮影した動画が、現在SNSなどで多く拡散されている。

【注意】

下記の動画には暴力的なシーンが含まれ、刺激が強いので、見る場合はご注意ください

アメリカの警察はなぜ脚部を撃たないのか?

SNSで流れてくる動画を観る限り、この容疑者は警官に至近距離から撃たれ、弾は腹部付近に命中したようだ(少なくとも筆者にはそう見える)。

SNSで日本の警官が刃物を持った人物と刺股(さすまた)や防護盾で対峙する映像を見たことがある人もいるだろう。そして「なぜアメリカの警察は、脚部や腕など致命傷とならない箇所を狙って犯人逮捕をしないのか?」と疑問に思うかもしれない。

これについて、米在住記者として知り得る情報をシェアしていきたい。

映画やドラマでは、犯人の腕や脚を撃って武器を落とさせたり、動きを止めたりする場面が登場する。しかし、実際のアメリカの警察の銃器使用では、必ずしも「脚や手を狙う」という考え方は取られないように思う。

なぜなのか。

NYPD(ニューヨーク市警察)の公開資料では、銃を使用する状況では「Center Mass」(身体の中央部分)を狙う訓練をしている、と説明している。

警察は、「脚や腕を撃って危険人物を制止する」ではなく

誰かを殺傷する可能性がある危険人物が今、目の前に迫っている状況においては、「その攻撃を確実に止めることができる手段」を、秒単位で判断して実行しなければならない。

ただしアメリカの警察であっても、(差し迫った危険な状況でない限り)いきなり発砲するわけではない。

今回のケースでは、容疑者の女はすでに2人を刺し、2本のナイフを手に警察官へ対峙した。警察は容疑者に何度もナイフを捨てるように命令した。そしてテイザー銃も使用した。

「声かけ、包囲、テイザー、(犯人が接近し)発砲」という段階が踏まれている。

また一般的に、警察官が銃を使用する目的は、「相手を殺すこと」ではない。

「生命や身体に対する差し迫った脅威を止めること」にある。

動いている人物の脚は胴体に比べて標的として小さく、正確に命中させることは難しい。そのため、より大きな胴体部分(Center Mass)を狙うほうが、脅威を止める可能性が高いと考えられる。

また実際の問題として、脚を狙って撃ったとしても、その危険人物の動きを止めることはできないかもしれない。

さらにもう一点。

脚を撃ったところで、必ずしも致命傷にならないとは限らない。この点も一般人は見落としがちだ。

大腿部には大きな血管があるため、脚を撃たれても大量出血によって死亡することは十分ありうる。

胴体を撃つ→必ず死亡する、でもなければ

脚や腕を撃つ→絶対に命が助かる、でもない。

もちろん警察官による発砲については今後、内部調査が行われる。適切な捜査、検証が行われるものと見られる。NYPDは今回の現場のボディカメラ映像を公開するとしている。

銃社会アメリカの警察は、危機が迫る場面では、日本のように刃向かう態度や冗談などは一切通用しないのだ。

アメリカで警察と対峙することになった場合、無駄な抵抗などせず、警察官の指示に「素直に従う」ことが何よりも大切だ。

ヘッダーイメージ: 31日の事件発生現場近くのイメージ写真

Text by Kasumi Abe 安部かすみ  本記事の無断転載禁止


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米国で警官に呼び止められ「絶対にしてはいけない」こと── 警察が13歳少年射殺

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