日本生まれ&育ちの子に「在特」付与の方針 日本で今年6月、改正入管法が成立した。これにより入管施設の長期収容がより解消されると共に、在留が認められない外国人の速やかな国外退去(強制送還)を促しやすくなったとされる。 しかし在留資格のない親の下、日本で生まれ育った子どもの処遇について、人道的な配慮を求める声が上がっていた。 今月3日、「一定の条件を満たせば、法相の裁量で在留特別許可(在特)を(家族にも)付与へ」と、毎日新聞などが報じた。参照 出入国在留管理庁のデータによると、強制退去処分が出ても帰国を拒んでいる外国人は4233人(昨年末時点)。うち日本生まれの18歳未満の子は201人。在特により7、8割の子どもが引き続き日本で暮らせるようになるという。 アメリカでは? 移民大国アメリカは、移民や難民の数、そのような人々の受け入れ態勢、国の地理(島国か陸続きか)が日本とはまったく異なるため、単純な比較ができない。またアメリカ国内でも州によって事情や対応は異なる。 例えば、移民が特に多いニューヨークやロサンゼルスなどの大都市圏(主に民主党寄りの州)は、不法移民に比較的寛容とされている。このような都市はサンクチュアリ・シティ(聖域都市)と呼ばれ、他州と比べて不法移民に対してある程度の保護が設けられている。(例えば、聖域都市では在留資格がない人も運転免許証を発行してもらえ、無料の英語クラスを受講できるなど) このような都市では、警察が路上で職務質問をすることがあったとしても、その者が合法滞在者か不法移民かを尋ねることはない。 アメリカでは不法滞在者を含むすべての移民は、都市の労働力として欠かせない存在になっている。ニューヨーク市内の不法就労者の数は50万人以上とも言われる。「低賃金労働者」の彼らは一般市民がやりたがらない仕事(例:農業、縫製業、清掃業、飲食業の皿洗いなど)を担い、都市機能を底辺から支えている。もはや移民なくして都市活動が成り立たないと言われるのは、そんな理由からだ。 これについては賛否あり、主に共和党は保守派を中心に、手厚い移民政策や保護に反対の傾向がある。国境の壁を築き大量の移民の流入を阻止しようとしていたトランプ政権と異なり、民主党は人道主義の立場から手厚い保護政策を掲げているが、ハリス副大統領が旗を振る移民対策は大失敗。メキシコとの国境に中南米から亡命希望者が押し寄せ、大きな社会問題になっている。南部テキサスなどの移民拘留センターは移民(亡命希望者)ですし詰め状態で、受け入れ体制がパンク。ちょうど1年前の昨年8月から、ニューヨークなどにもバス(や飛行機)でそのような人々が大量に送り込まれているが、受け入れ先の各都市もすでにパンク状態だ。(次回以降詳しく説明する) このように、日本から見れば到底信じられない、まるで「ザル」のようなズブズブの移民対策こそが、アメリカの現状である。 ただし、アメリカに住んでいる者として一つ言いたいのは、この国はヒューマニタリアン(人道主義)において、日本や他国を先行く先進国でもあるということだ。 上記の人々を無下に祖国に送り返せないのは、国交がない国があるというのも理由の一つだし、国境警備の予算が十分でなかったり、対策を先送りしてきた議会の責任も大きかったりするが、人道主義に則っているということもある。 不法移民の子も、この国では当然守られるべき存在として扱われる。アメリカは出生地主義だからこの国で生まれた子はアメリカ国籍が与えられる。問題は、子どもの時に親に連れられて渡米し、そのまま在留資格がなくなった後もアメリカに滞在しているケースだ。その子を守る移民システムはある。DACA(日本語の記事ではダカという表記もあるがアメリカ発音ではダーカが近い)プログラムと呼ばれているものだ。 DACA(ダーカ)とは? DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals 子どもの入国後の国外強制退去の猶予措置)。2012年6月、オバマ元大統領によって導入された移民政策で、簡単に言えば、幼少時に親にアメリカに連れて来られそのまま不法滞在となっている人々を保護する制度のこと。 この制度で救済されるのは、2012年6月15日の時点で などの条件を満たす人。 この場合、2年間は国外退去処分の対象から外し、就労も可能になる(2年ごとに更新可)。ただし犯罪者は対象外。そしてこの措置は、不法移民に法的地位や、連邦政府による福祉や教育支援の権利を与えるものでもないし、市民権取得の保証をするものでもない。 またDACAに関係なく、アメリカにいるすべての子どもは、親や自身の在留資格に関係なく、無料で高校までの公教育を受ける権利がある。参照 筆者は知人の男性(当時30代前半)とカフェで話をしていた時に、貴重な話をしてくれたことを思い出す。南米出身の彼は、幼少時に親に連れられアメリカに入国し、そのままオーバーステイ(不法滞在)になったと言った。公立高校を卒業したものの市民権がないので国外には出られない状態だった。しかし彼は米軍に入隊し一定期間軍隊で働き、グリーンカードを申請し最終的には市民権を得られたということだった。以前筆者が取材した日本出身のコメディアンのケースもそうだが、この国にはこのような話はいくらでもあるから、彼らがこの手の話をする際、包み隠すような仕草は見せない。 DACAを含む不法移民をめぐる制度については、米政党、議会、司法の中でも意見が対立し、政権が変わるごとに指針が揺れる。この参照記事(エキスパートの前嶋和弘さんによる)にもあるように、DACAは現バイデン政権では認められているものだが、20年6月15日にDACAの廃止決定を認めないとする判断を示した最高裁も、DACAが合憲かを示すことはしていない。DACAを含む移民政策の是非は今も賛否両論分かれ、大変複雑な問題だ。 (つづく) 移民 難民 過去記事 2022年 2020年 2019年 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止
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乱入防止の鉄線の外側で起こっていたこと ── 米大統領就任式【現地ルポ】
アメリカでは20日、新大統領のジョー・バイデン氏、新副大統領のカマラ・ハリス氏の就任式が無事に執り行われた。 今年は新型コロナウィルス感染拡大に伴い、規模が縮小され、式典はバーチャル形式で配信された。筆者も直前まで自宅で見届けようかと思っていたが、この歴史的な日の現地の様子を自分の目で見たいと急に思い立ち、1週間前にアムトラックのチケットを購入した。すでに売り切れ間近で、唯一購入できたのは午前3時25分ニューヨーク発の便だ。 列車は感染防止で空いていた。それでもカメラマンやユーチューバーらしき若者が何人か乗っていた。ばったり車内で会い「ノープランだよ。現地に行って決めようかと思って」と話している。そのうち、チケットを見に車掌がやって来て「オーマイガ〜ッ。店も開いてないのに、みんなD.C.に行くなんて。グッドラック!」と声をかけた。 早朝7時に首都ワシントンD.C.に到着。外はまだ薄暗い。いるのは警察犬を連れた警官と州兵、そしてジョギング姿の人が何人か。 6日に起こった過激派による議事堂乱入事件後、就任式のために州兵2万5000人が派遣された。出発前、友人は「ニュースでは危ないから近寄るなと言っているぞ。それでも行くのかい?十分気をつけて」と心配した。 確かに現地は戦場かと思うほど、ライフルを担いだ州兵がごまんと配備され、警官、爆薬探知犬、私服警官もたくさんいたが、逆に「安心感」に繋がった。有刺鉄線付きフェンスが張り巡らされ「議事堂には絶対に侵入できない」「何事も起こりえない」システムになっていたからだ。重装備の兵士の多くは鉄線の「内側」に1メートル間隔で立っている。彼らに緊迫した様子はなく、散歩中の人と笑い合ったりする姿も見かけた。すれ違いざまに目が合うと「おはよう」と向こうから筆者に声をかけてくれた兵士もいた。そこに立たされているだけの有り余る兵士を見て、「もう2度と暴動なんて起こすなよ」という強いメッセージ性を帯びた見せしめのように感じた。 正午:新大統領誕生 そうこうしていたら、就任式イベントの時間が迫り、柵の外側にも人がかなり増えてきた。 正午という時間をもって、正式に新大統領が誕生する。バイデン支持者も多く集まっていたから誕生と共にカウントダウンや拍手でも起こるのかと思いきや、所々で歓声は上がっていたものの、正午の時点で特に何もなかった。バイデン派、トランプ派、そのほか宗教団体が、それぞれお互いの主張を時に激しく遣り合っていた。 この日は6日のような過激派の姿はなく、キリスト教の保守的勢力(宗教右派)と呼ばれる人々の抗議活動が目立った。 このような一幕もあった。「トランプは間違った方向にリードしてきたと思う」と、バイデン支持者の女性がメディアのインタビューに応えていたら、通行人の年配の女性から突然ヤジが飛んできた。「ほらね、こういうことなのよ。このような振る舞いをしていいなんて、憲法でも(議事堂を指差しながら)あそこでも指導されていない。今の人が間違った方向の良い例ね」。 ジェシカファミリーは、DACA(ダーカ:不法移民の子に対して、強制退去処分を猶予する移民政策)を強く支持しており、「新政権にはICE(移民税関捜査局)を廃止してほしい」と期待を膨らませる。 「アメリカの危険な歴史の始まり」と危惧するのは、メガホンを抱えたニック・キメラ・ジュニアさん。ニューヨーク州ロングアイランドからやって来た。ただし彼はトランプ派でもバイデン派でもないと言い、「クライスト(キリスト教教派)だ」と胸元のバッジを指しながら自らをそう表現した。「数えきれないほどの胎児が中絶により犠牲になってきたが、新政権は中絶を支援する方向だ。また警察による残虐行為など、国が荒れていることも心配している」。 「同意できないからといって、お互い憎しみ合うのはやめよう」 この日の就任式では、ハリス副大統領、ミシェル・オバマ元米大統領夫人、ヒラリー・クリントン元国務長官の3人が、紫の衣装で臨んだことが注目を集めた。共和党のシンボルカラー(赤)と、民主党のカラー(青)を混ぜると紫になることから「融和」や「結束」の象徴なのだ。 しかしこの日、筆者が柵の外で目にしたものは、相手の意見を暴言などで遮る、互いの主張を一歩も譲らない人々だった。 また現場には、報道陣やユーチューバーらしき人々も非常に多かったのだが、ちょっとしたいざこざが起こったり過激な主張や行動をする人たちばかりが注目を集めていた。 そんな中、筆者はほとんど誰からの視線も浴びることなくひっそりと隅に置かれていたこのメッセージに注目した。 Stop Hating Each Other Because You Disagree (同意できないからといってお互い憎しみ合うのはやめよう) by TruthConductor. tv 心機一転、新たな4年が始まろうとしている。今まさに、このような姿勢こそがこの国に一番必要なのではないだろうか。 【この後ビデオも載せる予定】 関連記事 異例ずくめの「大統領就任式」もうすぐ(日本での視聴方法、スケジュール、豆知識) 「新たな時代の到来だ」バイデン勝利に祝賀ムードのNY 星条旗なびかせ喜ぶ人々 写真で振り返る決戦の投票日!「誰に投票した?」NYの人々に聞いてみたら・・・ (Text and photo by Kasumi Abe Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止
