米国で「脅威」とされるTikTokは本当に危険なアプリ?いずれ使用禁止に?アメリカで起こっていること

(以下は3月20日の投稿より) 「国家安全保障上の脅威」としてアメリカで懸念が高まり、一部で利用制限が進んでいる中国発の動画投稿アプリ、TikTok(ティックトック)。 下院で今月13日、同アプリの米国内での利用を禁止できる法案が可決され、さらに議論が深まっている。 TikTokは今後アメリカで本当に禁止になるのか? この法案は中国・北京に拠点を置く親会社バイトダンスに対し、6ヵ月以内に米政府が満足する買い手にTikTokを売却しなければ、米国内での利用をできなくするというもの。今後、法案が上院を通過し大統領が署名すれば「成立」するが、上院でも可決するかなど先行きは不透明だ。実際のところ、バイデン大統領は署名する意向を示した一方で、チャック・シューマー院内総務はこの法案を採決に持ち込むかどうかについての明言を避けている。万が一上院でもこの法案が可決されても、TikTokは「米国事業の売却を検討する前に法的権利を行使する」と発表。米メディアでは「この法案は上院で困難な道を歩むことになる」(ニューヨークタイムズ)や「長い闘いになるだろう」(USAトゥデイ)などという見られ方が一般的だ。 TikTok締め付けの背景 中国政府が同アプリを利用して米国民のデータにアクセスしたり偽情報キャンペーンを展開したりする可能性があるとし、TikTokのCEO(最高経営責任者)、周受資(Shou Zi Chew)氏が米下院の公聴会で議員に厳しく追及されたのは昨年3月。あれから1年が経った今でも、このアプリが「国家安全保障上のリスク」をアメリカにもたらすものだとする脅威は払拭されておらず、懸念はさらに高まっている。 ニューヨークタイムズやCNNによると、米国内にいるTikTokユーザーは1億7000万人にも上る。日本のユーザー数は1,630万人とされていて、日本の数と比較しても圧倒的な数だ。そしてこの脅威とは、中国共産党がこの1億7000万人もの個人情報を利用する恐れがあるということだ。 しかしながら、そもそもTikTokが今後売却を命ぜられることになった場合でも、実際に買収できる企業は「ほぼない」と見られている。あるとしても、買収の余裕がある企業といえばマイクロソフト、グーグル、メタ(フェイスブックやインスタグラムの運営元)などのGAFA、一部のビッグテックくらいだろう。 しかしここにも障壁がある。バイデン政権は反トラスト法(独占禁止法)を利用し、こうした企業のさらなる巨大化を阻止しているのだから。 また国家安全保障上の脅威がこの法案可決の理由にあるのだとしても、「国内のSNSユーザーのデジタルデータの保護に心底取り組むのであれば、TikTokだけを標的に禁止するのは実に閉塞的なやり方」(CNN)との指摘もある。 TikTokのこうした締め付けの背景として、今年の大統領選挙が大いに関連していそうだ。中国系の巨大アプリへ強硬姿勢を見せることで「選挙がある年に一部の中国タカ派の有権者から政治的ポイントを獲得できる可能性がある」(CNN)。よって議員らは選挙の年にTikTokへの注力を倍増させているというのだ。 実に興味深いのは、トランプ前大統領のTikTokに対する姿勢だ。2020年にトランプ氏は大統領令でTikTokを禁止しようと試みたが、裁判所によって阻まれた。 以来トランプ氏はTikTokに対する立場を逆転させ、今回は驚くことにこのTikTok規制法案に反対する立場を取っている。 TikTokについても「分断」 アメリカでは近年、行政府関連のオフィスや大学のキャンパスなど、少なくとも33の州でTikTokの使用が何らかの形で制限されるようになった。 実際に筆者が住むニューヨークでも、セキュリティ上の懸念から昨年8月16日より市が所有するデバイスからTikTokへのアクセスが禁じられている。 ただ今回可決した法案を含め、強化されるTikTokへの規制については国内でも意見が分かれるところ。言論の自由を唱える団体は、禁止によって表現が抑制されることを懸念し、この法案に反発する姿勢を取っている。 AP通信とシカゴ大学広報研究センター(NORC)による最新の世論調査では、TikTokの全米規模での禁止に対して成人の31%が賛成したのに対して、35%が反対したことがわかった。TikTokのデイリーユーザーの間で反発は特に強く、73%が反対すると答えたとし、ここでも「アメリカの分断」(USAトゥデイ)が指摘された。 過去記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース エキスパート「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)本記事の無断転載禁止

TikTokは国家安全保障上の脅威?米公聴会に現れたCEO 周受資とはどんな人物か

情報の安全性や中国共産党との繋がり、若い世代への悪影響がアメリカで懸念され、「国家安全保障上の脅威」とみなされている中国発の動画投稿アプリ、TikTok(ティックトック)。 米政府職員は業務端末での使用を禁止され、今後の同社の出方次第では米国内で利用できなくなる可能性がある。 23日にはTikTokのCEO(最高経営責任者)、周受資(Shou Zi Chew)氏が米議会下院の公聴会に現れ、厳しく追及を受けた。 TikTokについて「拠点はシンガポールとロサンゼルスにある」「中国政府がデータにアクセスできたという証拠はない。彼らに尋ねられたこともない」「アメリカの利用者データはアメリカ国内で管理している」と訴えたものの、矢継ぎ早に続く議員からの厳しい質問にYES/NOで答えられないことが多く、説明が冗長なあまりに時間切れとなり最後まで聞いてもらえなかったり途中で腰を折られたりと、結局どういった返答なのかわかりづらいものがあり、何とも歯切れの悪い印象だった。 質問と返答が噛み合っていない場面も多く、明らかにイライラした口調の議員に「YESかNOかわからない」「あなたが今証言したことは信頼に値しない」とまで言われた周氏。 結局のところ、中国共産党がTikTokと周氏をコントロールし悪影響を与えているのではないかという米議員の疑念は払拭できなかった。 TikTokのCEO、周氏とは? ところでこの周氏とはどんな人物なのだろうか? 周氏はシンガポール生まれ・育ちの40歳。父親は建設業、母親は簿記職という労働者階級の家庭で育ったようだ。英語と中国語の標準語、マレー語を話すマルチリンガルで既婚、2人の子を持つ。 「アメリカでは人口の半分、1億5000万人以上がTikTokを利用している」とTikTokを使って紹介する周氏 ニューヨークタイムズによると彼は投資家で、TikTokの親会社のバイトダンス(ByteDance)社などにこれまで投資してきた。そして中国発の家電&スマホブランド、Xiaomi(シャオミ)の元幹部だ。 英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで経済学を学び、米ハーバード大学でMBAを取得。2010年フェイスブックでインターンシップの経験を積み、ロシア生まれのイスラエル市民とされる億万長者ユリ・ミルナー氏率いるベンチャーキャピタル、DSTグローバルに入社。中国語を話せることで中国のDSTで出世し、翌年にはDSTによるシャオミへの5億ドルの投資を主導した。 さらに2年後の13年、周氏は、中国人の張一鳴(Zhang Yiming)氏に会わないかとミルナー氏に誘われた。張氏とは中国系ニュースアプリ「ジンリ・トウチャオ(Jinri Toutiao)」を立ち上げた人物だ。その後、2人は親密な関係を築いたとされる。 トウチャオはその後、バイトダンスの傘下に入る。周氏は15年までにシャオミのCFOとなり、英語力を生かしてグローバル分野で手腕を発揮。21年5月、TikTokのCEOに就任した。 TikTokのアプリ自体を取り巻く利用状況、社会に与える影響力についてどれほど知識がありどれほどの熱意で仕事に取り組んでいるのだろうか。公聴会からは伝わってこなかったが、CEO就任時の報道では「あまりアプリのことを知らないようだ」という関係者談があった。また、あるミーティングで従業員から100年後のTikTokの在り方について問われた周氏は、このように答えたと伝えられている。「私はただ翌年(当座)の金儲けを考えているだけだ」。 TikTok関連・過去記事 Revised:ミルナー氏について、ニューヨークタイムズには「the Russian billionaire Yuri Milner.(ロシアの億万長者)」との記載がありますが、22年8月にロシア国籍を放棄したという情報があるため修正しました。 Top photo: cottonbro studio on Pexels.com Photo: 米公聴会で初証言する、TikTokの周受資CEO。 受け答えは丁寧だが、厳しい質問にタジタジの場面も。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止