潜水艇タイタン事故から1年 次なるタイタニック探索ツアーの成功に意欲を示す億万長者たち

イギリスの豪華客船、タイタニック号の探索ツアーに出発した潜水艇が深海で消息を絶ち、1年が経った。 今も海に沈むタイタニック号の残骸を見るために5人の搭乗者を乗せて出発した潜水艇「タイタン」号は昨年6月18日、深海で水圧に押し潰され爆縮(インプロージョン)したと見られている。 この事故により、ツアーを実施した米オーシャンゲート社のストックトン・ラッシュCEOをはじめ、フランスの探検家、パキスタンの実業家親子など搭乗者全員が帰らぬ人となった。 この事故はさまざまな観点で物議を醸した。8日間のツアー料金が1人につき約25万ドル(約3900万円)と高価にもかかわらず、潜水艇は「実験的」なもので、船体(乗客が座っていた空間の周囲)の主要部分は通常のチタンではなくより安価なカーボンファイバーで建造されていたことが判明した。またガラス製ののぞき窓もメーカーにより認証されていたのは深度1300メートルまでだったという報道もある。操縦にはゲーム用コントローラーが使用されていた。 潜水艇の破片は海底から回収され、7月にオーシャンゲート社は営業を停止した。 この事故後、タイタニック号を見に行くツアー市場は閉ざされたと見る向きもあったが、CNNは別の米大手潜水艦運営会社、トリトン・サブマリンズ社が残骸ツアーの成功に向け、現在意欲的に取り組んでいることを報じている。同社はタイタン号が安全基準を満たしていなかったとしており、自社による安全なタイタニック・ツアーはすでに計画段階にあるとした。 不動産業のザ・コナー・グループを経営する億万長者で、トリトン・サブマリンズ社の出資者と見られるラリー・コナー(Larry Connor)氏も、事故から1年経った今、メディアに対し口を開いた。 「正しく取り組めば、本当に人生を変える素晴らしいもの(深海ツアー)になることを世界に示したい」と、ツアー成功へ意欲を見せた。 CBCニュースも事故から1年となる今、「また一人の億万長者がタイタニック号へ向かおうとしているが、業界の基準を無視しているわけではないと発言」と報じた。 潜水艇業界を先導する企業として知られるトリトン・サブマリンズ社について、CBC曰く「タイタニック号探検が容易に思えるほどの深さまで潜水したことがある」。タイタニック号が沈んでいるのは水深3800メートルの場所で、記事によると同社の潜水艇は海面下約1万900メートルという地球上でもっとも深いマリアナ海溝まで到達した実績があるという。 次なるツアーに意欲を見せるコナー氏の力強い支援者でありビジネスパートナーが、トリトン・サブマリンズ社共同設立者のパトリック・レイヒー(Patrick Lahey)氏だ。 このレイヒー氏とトリトン・サブマリンズ社については、2003年6月に潜水艇でタイタニック号を見に行った実績を持つタイタニック号探検家、ラリー・デイリー(Larry Daley)氏もお墨付きを与えている。 デイリー氏は「彼らはすべてをよく設計&エンジニアリングし、安全面について妥協せず高い基準で事業を行なっている。彼らには専門知識があり資金的支援もある。そして彼らは物事を急いでいない。レイヒー氏が指揮を執れば、安全は約束されたも同然だろう」と語った。 事故を起こしたオーシャンゲート社の故ラッシュCEOは「認証がイノベーションの妨げになると感じていた」と伝えられるが、トリトン・サブマリンズの共同創業者、レイヒー氏の考えは真逆だという。 探検家デイリー氏によると、事故を起こしたタイタン潜水艇とは異なり、トリトン・サブマリンズの潜水艇は独立機関によって認証される予定で、すべてのプロセスが完了するまで2、3年かかるだろうとのこと。 またトリトン・サブマリンズ社とオーシャンゲート社の決定的な違いは、創業者の性格にあるとも述べた。「(トリトン・サブマリンズ社は)近道をしたり、エゴをもって行動したりする人たちではない」。 トリトン・サブマリンズ社による深海ツアーがいつ実現されるのか具体的なタイムラインは発表されていないものの、認証を経た数年後になりそうか。大ヒット映画の題材にもなり、ロマンを掻き立て、沈没から100年以上経った今も、世界中の富豪や冒険家を魅了する「タイタニック残骸ツアー」。いざ実現となったならば二度と悲劇が起こらないよう安全第一に実行されることを願うばかりだ。 関連記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース エキスパート「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)本記事の無断転載禁止

「息子の代わりに私が行く予定だった」タイタニック探索ツアーで消息不明の19歳の母が証言

難破船、タイタニック号の残骸を見に行くツアーで、5人が行方不明だ。その中には親子もいた。 パキスタン出身の実業家で英国籍を持つシャザダ・ダウッドさん(48)と大学生の息子、スールマン・ダウッドさん(19)。 シャザダさんの妻クリスティーン・ダウッドさんは25日、英BBCの取材に応え、行方不明となった潜水艇タイタン号に「実は、自分が乗る予定だった」と告白した。 クリスティーンさんは夫のシャザダさんとこの探索ツアーに参加予定だったが、新型コロナのパンデミックで旅行がキャンセルになった。そのうちツアー参加への気持ちが薄れたようで、「それでスペース(搭乗席)を(息子のスールマンさんに)譲った」。当時の気持ちを振り返り、「2人はずっと行きたがっていたから、私は本当に嬉しかった」と語った。 クリスティーンさんによると、息子のスールマンさんはルービックキューブの名手で、12秒で攻略したことがあるほどの腕前だったようだ。ルービックキューブをいつも持ち歩き、18日の探索ツアーでも「タイタニック号が沈む3700メートルの深海で解くのを楽しみにしていた」。 17歳の長女も含むダウッド一家4人は18日、潜水艇タイタンの出発地点まで、カナダ船のポーラープリンス号で向かった。好奇心旺盛な性格のシャザダさんは、深海ツアーを前に「子どものように興奮していた」そうで、「最後はハグし、冗談を言い合って別れた」と、クリスティーンさんは夫と息子がタイタン号に搭乗する直前の様子を振り返った。 タイタン号が行方不明となり沿岸警備隊の捜索中、クリスティーンさんはずっとポーラープリンス号で待機していた。「消息が途絶え、96時間(緊急用酸素で生存できる時間)を超えたとき、私は希望を失った」と語った。 米NBCニュースではシャザダさんの姉で、スールマンさんの伯母にあたる女性の証言も紹介された。パキスタンで育ったシャザダさんは幼い頃、タイタニック号の沈没を描いた映画『A Night to Remember』を何度も観て、タイタニック号に惹かれていった。一方スールマンさんはツアー参加について「あまり乗り気ではなかった」「怖がっていた」そうだ。その日が父の日だったため、父親を喜ばせようとして一緒にツアーに参加したという。 事故後も運営会社のウェブサイトに変更なし ダウッドさん父子を含む5人の命を奪った潜水艇タイタン号。運営会社オーシャンゲート・エクスペディションズのウェブサイトは、事故後も(現時点では)通常通り閲覧できる。トップページには、このように書かれている。 タイタニック号を探索しに行こう 世界でもっとも有名な難破船を探索しよう *スペースに限りあり さらに「詳細」をクリックすると、このような文言で参加が呼びかけられている。 スリル満点でユニークな旅 タイタニック号を自分の目で確かめる貴重な1人になろう ツアー参加の条件は17歳以上で、週ごとに最多6人が参加できるようだ。来年の6月にも2つのツアーが予定されている(いた?)。 宣伝文句の中で、「あなたの探索ツアーに同行するかもしれない人々」として、今回のツアーで行方不明者となったフランス人探検家、ポールアンリ・ナルジョレ氏をはじめ、NASAの元宇宙飛行士のスコット・パラジンスキー氏、海洋考古学者のブリジット・バクストン博士ら6人が紹介されている。 このように著名人やインフルエンサーを利用し大々的にPRしていたツアーだったが、運営会社のCEO、ストックトン・ラッシュ氏も事故で行方不明となり、今後はどのように運営されていくだろうか。 関係者の声を含むPR動画 関連記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

深海ツアーの誘い「断った」人気インフルエンサーが証言。潜水艇タイタンのお粗末な安全管理の裏で

タイタニック号の残骸を見に行くツアー中、大西洋の深海で消息を絶った米潜水艇「タイタン」。 事故数日前にユーチューバーが潜水艇内部を体験した動画がアップされ話題になっているが、動画公開の2日後、さらに別の人気ユーチューバーもこのツアーに招待されていたと証言した。 潜水艇の運営会社、オーシャンゲート・エクスペディションズに深海ツアーに誘われたと告白した別のユーチューバーは「MrBeast(ミスタービースト)」チャンネルの、ジミー・ドナルドソン(Jimmy Donaldson)さん。チャンネル登録者数1億6200万人を超える、大人気ユーチューバーだ。 ジミーさんは25日、ツイッターを通し「今月初めに、タイタニック号の探検ツアーに誘われていた」と告白した。ジミーさんは、その誘いを断ったという。 さらにツイッターには、iMessageのようなテキストの一部も公開。そのテキストにはこう書かれている。 このテキストはジミーさんをツアーに誘った友人とのやりとりの一部で、スクリーンショットも友人が送ってきたものらしいが、具体的に友人とは誰なのかは不明だ。 別のYouTubeチャンネル「ダルミド(DALLMYD)」のジェイクさんも、同運営会社による深海ツアーに誘われていた一人だ。ジェイクさんはツアーに実際に参加し、その時の様子を23日にYouTubeに公開し話題になっている。このツアーについてジェイクさんは、動画撮影のために訪れたもので、高額のツアー代金を支払って参加した一般の乗客とは異なると言っている。 潜水艇の杜撰な安全管理体制が指摘される中、運営会社は若者に人気のインフルエンサーを利用し、ツアーの宣伝に力を入れようとしていたのかと物議を醸している。 関連記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

タイタニック残骸ツアー。事故直前の内部公開したユーチューブが話題(動画の解説含む)

タイタニック号の残骸を見に行くツアーで18日、消息を絶った米潜水艇「タイタン」。同様の潜水艇での深海旅行を試みたユーチューバーが、事故の数日前に撮影した映像が話題になっている。 トレジャーハンター(探検家、冒険家)のジェイク(Jake)さん。彼は1340万人(現在)のフォロワーを持つチャンネル「ダルミド(DALLMYD)」のユーチューバーで、スキューバジェイク(Scuba Jake)という名でも知られる。 タイタン号の事故直前、彼はツアー運営会社のオーシャンゲート・エクスペディションズによるタイタニック号の深海旅行に参加していた。ユーチューブの撮影のために訪れたもので、高額のツアー代金を支払って参加した一般の乗客とは異なるという。 また、彼は潜水艇の出発地までボートで向かったものの、コンピュータの不具合と悪天候のため、自身の深海旅行は結局中止となった。 その時のツアーの模様が映像にまとめられ、23日に公開された。 この時期、潜水艇で予定されていた深海旅行は5つで、ジェイクさんの搭乗予定(ミッション3)は中止となり、ミッション5と呼ばれる別のツアーが実行され、消息不明となった。 また動画の中では、犠牲者5人のうち2人の生前の姿が映し出されている。タイタン号の運営会社のCEOで、自らタイタン号を操縦したストックトン・ラッシュ(Stockton Rush)氏と、フランス人探検家のポールアンリ・ナルジョレ(Paul-Henri Nargeolet)氏だ。(旗にサインをする様子:動画09:13あたり) ジェイクさんはこの時、ナルジョレ氏に直筆のサインをもらっており、事故後「お会いしたのは短い間だったけど、とても良い方だった」「このサインは一生大事にします」と語った。(動画06:30と25:13あたり) 自身の深海旅行が中止となった後、天候が改善されたので、ジェイクさんはラッシュCEOや乗組員らと共にタイタン号に実際に搭乗し、深さ3000フィート(約914メートル)の地点までテストダイブを体験した。映像では、タイタン号の内部(トイレ含む)の様子、そこに靴を脱いで乗り込む様子、潜水の瞬間、笑顔でリラックスした様子のラッシュCEOらが映し出されている。(動画18:50あたりから) 海に潜った後、潜水艇の操縦コントローラーは、ビデオゲームで使うような簡易的なものだったことがわかる。(動画24:00あたり) ジェイクさんはこのテストダイブの直前、このように感想を述べていた。「潜水艇に搭乗後、ドアが外側からボルトで密閉されると逃げ場がなくなるので恐怖を感じる」「緊張するが、同時にワクワクもする」。 ジェイクさんによると、タイタン号による深海旅行について「長い話をシンプルにまとめるならば、毎日のように彼ら(潜水艇)は何らかの問題が起こっていて、それは日常的なことのようだった」という。また「もし天気が良かったら、自分も亡くなった5人と同じように、深海に行っていただろう」とも語った。 【23日に公開されたジェイクさんの動画】 Titanic Sub Tourism Expedition – Exclusive Footage (My Personal Experience) タイタニック号潜水観光遠征 – 独占映像 (私の個人的な体験) Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止